Franzの音楽にまみれた生活

Franzに音楽をください

ロジェ・ムラロへ捧げる讃歌

昨日今日と体調が悪く、お休みを頂いているFranzです。頭が痛くて身体が重く、身体を動かすだけでもかなりの労力がいるので、かなり面倒。困ったもんだ。


そんな訳で、横になりながら何か音楽を聴こうと思ってたんですが、中々決まらない。小一時間悩んだ結果、フランスのピアニスト ロジェ・ムラロ(Roger Muraro)のメシアンのピアノ作品全集が目に留まったので片っ端から聴く事に。この全てのCDに写っている眼鏡のおじさんがロジェ・ムラロです。一枚だけ違う眼鏡のおじさんが写っているCDがありますが、そちらは作曲者であるメシアン


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フランスの巨匠 オリヴィエ・メシアンが遺したピアノ曲を、全部録音した人は少ない。その数少ない一人、ムラロのこの録音は極めて素晴らしい。一つ一つの曲単位で見ても、そのどれもが高水準の出来だ。


まず最初に、僕の大好きな『鳥のカタログ』(写真真ん中の鳥が写っているCD)から聴き始める。全13曲、約2時間半を要する大作だ。ムラロは大変クリアな音で曲を進めていく。ムラロのメシアンの演奏の特徴は、情緒的になり過ぎる事なく、極めて優れたテンポ感とリズム感で音楽をぐいぐいと進めていく所だろうか。理知的なんです。曲の構造がはっきり見えるような明晰さがありつつ、沸き立つ高揚感もある。この『鳥のカタログ』にはアナトール・ウゴルスキによる名盤があるが、それに比肩する演奏だ。ウゴルスキとの違いを感じながら聴くのも中々面白い。ちなみにウゴルスキの演奏は、ムラロの演奏よりもタッチの多彩さやデュナーミクのコントラストが半端ない、ドラマチックな演奏。どちらを取るかは人によりけりだろう。


続いて、『鳥の小スケッチ』や『四つのリズムのエチュード』と小品が入ったディスク(写真左)、若かれしメシアンが書いた『前奏曲集』と、一曲で30分の演奏時間を要する傑作『ニワムシクイ』が入ったディスク(写真右)、そして高名な『嬰児イエスに注ぐ二十のまなざし』(写真一番上)という順番で聴く。特に『嬰児イエス…』は名盤が多い名曲だが、これも実に良い。タッチの乱れやミス等もあって、ここ撮り直せばよかったのに、と思ってしまう面も少しあるのだが、そういった瑕疵を忘れさせてくれる素晴らしい演奏である事には変わりない。個人的には、有名なベロフ盤や個人的に大好きなオズボーン盤と同じくらい好きである。…というか、メシアンの音楽はその殆どが技術的にも音楽的にも凄まじい難曲揃いであるのに、全て高水準の演奏で、ムラロの演奏の素晴らしさに驚愕しまくりです。そして、『鳥のカタログ』や『四つのリズムのエチュード』、『ニワムシクイ』は、誰かの咳が聞こえたり最後に拍手が入ったりしているから、どうやらライヴ音源のよう。ライヴでこの完成度はたまげるわ…。録音が少し色気に欠けるというか、なんだかぱっとしない音ではあるけど、それを差し引いても良い演奏かと思います。


実はこのロジェ・ムラロ、僕が中学生の頃から知っている演奏家でした。しかもメシアンの演奏で。これはいつか改めて書くつもりですが、当時ショパンやリストばかりしか聴いていなかった僕が、たまたまニコニコ動画にアップされていたムラロが弾く『嬰児イエス…』の6曲目「御言葉によって全ては成されたり」を聴いて感銘を受けたのが最初でした。大学一年の時に中古でこの全集を揃えて、ちょびちょび聴き始めて、今となってはメシアンの音楽が大好きに。中学生の時に聴いてなかったらまだ興味すらなかったのかもと思うと…人生って何が起こるか分からないもんだ。


ここまで話しておいて、ムラロの録音はこれしか持ってないのが現実。ショパンとかリスト、ラヴェルも弾いてるようだし、揃えてみようか…せっかくこのムラロの素晴らしい演奏のお陰で、メシアンのファンになれたんだからね。ロジェ・ムラロ、万歳!


さて、まだ体調が優れないけれど、明日は大丈夫かな…もう一度メシアンの音楽に浸りながらゆっくりしましょうか。それでは今日はこの辺で!